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第五章 すれ違い

 花と緑の専門学校を卒業した陽が、狭き門である有名花壇へ見事採用されてから、3ヶ月あまりが過ぎていた。  仕事にも慣れ、1年を通じて花屋が最も忙しい母の日も何とか乗り切り、彼には心身共にようやくゆとりが生まれ始めていた。  そして、高校時代の恩師・衛と一つ屋根の下で暮らし始めてからも、ちょうど3か月。  彼との関係にも、陽はゆとりを持ち始めていた。  まぁ、ゆとりと言っても緊張や遠慮など端から無く、どちらかといえば油断。  さらに言ってしまえば慢心。  要するに、僕は衛に何を言っても何をやっても許される、そんな甘えた自信だった。  こんな日常の、ある日の朝。

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