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第五章・2
おかしい、というか、またか、というか。
朝、エンドウマメとアサリの粥を炊き上げたところで、衛はひとつため息をついた。
陽が、まだ起きて来ない。
昨晩も、帰りが遅かった。
また職場の飲み会かと思いきや、今回は同僚たちとのコンパだったらしい。
彼は、まだ若い。
社会に出て、見るもの聞くもの経験するもの、全てが新鮮で楽しいに違いない。
交友関係が広がるのはいいことだが、衛は密かに心配でもあった。
いつか、痛い目を見るのではないか。
若さゆえの過ちは、自分も散々経験してきたものだ。
だからこそ、陽にはそんな思いはさせたくない。
高校生の頃、勝手気ままに暮らしていたあの子猫。
自由と引き換えに、辛い思いも悲しい思いも充分味わってきたはずだ。
彼をまた、雨に打たれてずぶぬれで、時々淋しく鳴く猫にはしたくなかった。
だがしかし。
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