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第五章・8
「遅いな」
すでに時計の針は21時を回っている。
昨日、外で飲んだのだ。
肌荒れを気にしていた陽は、連日夜遊びする事などないはずだ。
だのに、なぜ遅い。
朝、ささいな言葉に腹を立ててしまった。
お詫びと仲直りの気持ちを込めて、夕食には彼の好物を作って、おいしいデザートも用意した。
プレゼントまで準備して待っているというのに。
『そうやって、いつもいっつも年上ぶって!』
『また偉そうに、大人のふりして。すぐ逃げるんだから!』
今朝の、陽の言葉が思い出される。
正直驚いたし、少々傷ついた。
だが時を置いた今考えると、あいつも一人前の口のきき方をするようになったじゃないか、といった喜びに似た感情が生まれていた。
甘えから来る、口の悪さは今までもあった。
だが今回は、僕を子ども扱いするのはいい加減やめて欲しい、という意思が見える。
衛と対等でいたいのだ、という自己主張が見えている。
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