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第五章・10

 遺体は後ろ手に縛られ、激しい暴行の痕や刃物で刺された傷が数十か所も見られた。  さらに金品が奪われていた……。  またか、と衛は顔を顰めた。  最近、このように狂気じみた事件が多すぎる。  ごく普通のニュースが特番でもないのに、その犯行内容をやたら詳しく発表する世相も嫌いだ。  知りたくもない細かな情報まで垂れ流してくる。 『強盗殺人事件がありました』でいいではないか。  興味がある人間は、ネットで検索するといいのだ。  まだ心の柔らかな未成年に、あまりにも残酷な表現を日常的に聞かせたくはない、と彼は教師らしい事を考えていた。

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