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第五章・16
「で、さ。どういう関係? このヒト。ヒナちゃんの、お兄さん?」
(ぶッ、無礼者ォ!)
衛は心の中で、眼の前の若者を真剣で唐竹割にしていた。
しかし、続く陽の返事に、脳内で手にしていた日本刀を取り落した。
「ん? うん、兄さんだよ。今、一緒に住んでるんだ」
眼の前が、真っ暗になった。
兄さん……、だと?
そっかぁ、などと愛想笑いをしている若者の声が、やけに遠くに聞こえる。
「あ、そういえば髪型もお揃い。仲、いいんだ」
「まぁね」
そうやって会話を併せながらも、陽は少々後ろめたさを感じていた。
どうして胸を張って、恋人です、同棲してるんです、と言えないのか。
今なら、まだ間に合う。
な~んちゃって♪ とか何とか言って、ひっくり返せばいいだけの話だ。
だがそこへ。
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