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第五章・18

 だが衛の言葉は、陽のどの予想にも当てはまらなかった。  「一応、食事の用意はしておいたが。どうする」  柔らかな、衛の声。  いつものように。いや、いつも以上に温かく包み込んでくれるようなその声色。 (衛、どうして?)  陽は、小さく震えた。  なんだかひどく、不安になった。  なぜ遅くなったか、訊かないのか。  あの男との関係を、勘ぐらないのか。  どうしてそんなに、優しいのか。

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