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第五章・19
「お風呂に入って寝る。疲れちゃった」
「そうか」
衛の横をすり抜け、ぱたぱたと風呂場へ駆けてゆく陽。
その後姿を見て、衛はただ静かに微笑んだ。
可愛いな、陽。
陽は、衛にとってひたすら可愛い存在だった。
何を言っても何をやっても許すことのできる、可愛い恋人だった。
可愛くて可愛くて。
そう、もはや束縛できないくらい可愛いくて。
とうとう好きな奴ができたか、お前に。
何て事だ。
こうなってから、本当の自分の気持ちに気づくとは。
俺は、心底惚れ抜いていたんだ。
あの身勝手な猫に。
これまで関係を持ってきたどの恋人より、深く、強く、激しく愛していたんだ。
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