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第五章・20

 しかし、もう遅い。  出会いがあれば、別れもある。  これまでも、そうだったじゃないか。  引き留める権利などない。  そんな魅力を持っている自信も、ない。  陽の好きなようにさせてやる事が、俺からの最後の愛情。  そして多分、これが俺の最後の恋。  あいつ以上に誰かを好きになる事など、もう一生ないだろう。  陽が脱ぎ捨てた細い靴をきれいに揃えて、衛は固い表情で玄関の明かりを消した。

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