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第六章・9

『もし、ここを出たかったら、いつでも出ていいんだからな」 『おまえがこの家を出たくないなら、俺が外へ出てもいい』  どういうことかな、衛。  別れよう、ってこと?  ヤだ。  嫌だ、衛。  帰ってきて。早く、帰ってきてよ。  ただ静かに、涙が頬を流れる。  いつまでも帰らない人を待つのが、こんなにも辛いなんて。  目を真っ赤に腫らして、陽は衛の帰りをひたすら待っていた。

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