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第六章・10
事件は、突然解決した。
行方不明の少年が、帰宅したのだ。
「申し訳ありませんでした!」
安堵に泣き崩れる少年の母と、涙をこらえて肩を震わせる父とに。
そして周囲を取り巻く捜索隊に、30代の男性が必死で頭を下げている。
何ということはなかった。
彼は、春休みに少年が両親と共に遊びに出かけた、親戚のお兄さんだったのだ。
男性は商用で、少年の住む地域までやってきたという。
帰宅途中の少年とばったり出会い、せっかくだからと郊外の洒落たレストランでディナーを御馳走した。
少年は、お兄さんが親には連絡をしていると思い込み、お兄さんは少年が連絡しているものと思い込んでいた。
授業中、マナーモードに切り替えてそのままだったスマホはその日に限ってバッグへ放り込まれたままで、幾度となく繰り返されたコールを少年に伝えることができなかった。
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