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第六章・11

 大山鳴動して鼠一匹。  いや、これで済んだからそんな事が言えるのだ。  そう、衛は考えた。  無力な未成年を襲う事件は、後を絶たない。  これからは、今以上に大人がしっかりしなくてはならないのだ。 (そういえば、あいつがまだ高校生だった頃も、こうやって夜中まで駆けずり回ったっけなぁ)  ほんの数年前、夜遊び陽を補導していた事が、ひどく懐かしく感じられる。  疲れた。  しかしもう疲れて帰っても、俺を待つあの可愛い猫はいないのだ。  そう思うと、足取りがやたら重くなった。

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