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第七章・3

 先に湯を使わせてくれるなんて、これまた珍しいことだ、と衛は浴槽に浸かり顔をひとつ撫でた。 「手料理に、一番風呂。その後は、体もいただけるのかな?」  冗談めかして、独り言を呟いた。  そして、息を吐いた。  今回は、許してくれたか。  だが今後を考えると、やはり気が沈む。  若く、勢いよく大空へと羽ばたき始めた陽。  かたや俺はというと、そろそろ年に一度の健康診断のたびに、血圧やらγ-GTPやら血糖値やらを気にするようになってきた年頃だ。  俺はもう、巧く飛べないんだ。

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