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第七章・4

 時が来れば、一人で飛んで行ってしまうんだろうな。  やはりまだ、気が重い。  将来に不安を抱くなど、生まれて初めてだ。  物思いに耽っていると、バスルームのガラスサッシがなぜか開いた。 「マ・モ・ル♪」  陽が、一糸まとわぬ姿で風呂場へ入って来ている! 「なッ! ななな!?」 「何だ、はしたない! って言いたいんだろぉ~」  悪びれた様子もなく、陽はそのままシャワーを使い始めた。  たっぷりと泡立てたシャボンの香りが、鼻に心地いい。 「こういうの、嫌い?」  髪を、体をさっぱりと清めた猫が、甘えた声を出しながらバスタブの中まで侵入してきた。  ゆっくりと擦り寄って、喉を鳴らしてきた。 「今日はお疲れ様。そして、ね」  うつむいて、でもその後顔をあげて。  それでもやはり、少し視線を逸らして。 「昨日は、ごめん」

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