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第七章・15
「あ……れ? あれっ?」
柔らかく温かな布団に、陽は包まれていた。
反射的に隣を確認すると、衛はちゃんとそこにいた。
「すまん。まさか、気を失うとは」
衛の大きな掌が、頬にかかった髪を優しく梳いてくれる。
甘えて抱きつき、その後で思い直して陽は彼から少し離れた。
こういう仕草が、きっとまだ子どもなんだよね。
喉をゴロゴロ鳴らすのを止め、わざとツンと澄ました顔で猫は衛に訴えた。
「もう一度、今度はベッドで。何て、ダメだからね。僕、もう疲れちゃったんだから」
「そうだな、こんな時間だ。今夜はもう、寝……」
言いかけて、衛は言葉を飲み込んだ。
寝ろ、と言いかけて、改めて言いなおした。
「今夜はもう、寝ようか」
「うん」
衛の心配りに気づいたのか、気づかなかったのか。
陽はただ短く返事をよこして、そのまま目を閉じた。
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