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屋上にて─1─

 廊下に貼りだされた試験の結果を見て、胸を撫で下ろすのは何回目だろうと思う。  今回も僕は無事に一番を取ることが出来た。報告をしようと制服のポケットに手を突っ込んだ時、背後からいつもの声が飛んできた。 「うわー、さすが黒澤。今回も一位じゃん」 「T大狙ってるんでしょ。余裕じゃない?」 「黒澤くんって結構イケメンなのに、勉強ばっかりで勿体ないよね。休み時間もいつも難しそうな本読んでるし。少しは遊んだらいいのに」  何も知らない奴らの口から零れる言葉が、制服に針のように刺さる。僕はそれを掃うように身体を半回転させると人混みの中から抜け出した。  こんな風に気付いていないふりをするのも、もう何回目だろう。

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