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始まりの予感─3─
その言葉の意味を理解する前に、真嶋は友達に向かって「わりぃ、俺今日はパス」と言うと僕の手首を掴んだ。
「え、ちょっと」
ぐい、と強い力で引かれ、僕は真嶋に導かれるように廊下を歩き出す。
「お前、いいのかよ!友達と約束あったんだろ」
「別に。いつも通りハンバーガー食って帰るだけだったし。それに」
真嶋がくるりと振り返る。ふわりと踊る髪の隙間からピアスが光っているのが見えた。
「黒澤のこと、もっと知りたい」
頬が熱くなる。よくそんな恥ずかしいことをさらっと口に出来るな、と思いながら、顔が赤くなっているのがバレないよう俯いた。
急に僕の手首を掴んでいる彼の手を意識してしまって、自分のものではない体温に鼓動が速くなっていく。
「手」
「え?」
「手、離せよ。子どもじゃないし、ひとりで歩ける」
真嶋は、わりぃわりぃ、と笑ってするりと手を離した。だけど彼の手が離れてからも、手首に宿った熱はなかなか冷めなかった。
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