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始まりの予感─4─
*
「俺、図書室初めて来たかも」
図書室に着くなり、真嶋は物珍しそうに本が陳列されている棚を見回す。僕はカウンターに行き、図書委員に返却の手続きをお願いした。この間の試験、成績は一位だったが現代文の点数が前回より落ちていた。念のため、参考になりそうな本を探してみよう。それらしき本が並んでいる場所まで行くと、背後からパタパタと足音が近づいて来た。
「お前、図書室では静かにしろよ」
声を潜めて真嶋に注意する。
「はーい」
本当に理解しているのか、と問い質したくなるような返事が返って来る。
「うわ、すげー難しそうな本。これ読むの?」
僕が手にしている本を覗き込む。急に縮まった彼との距離に、心臓がドクンと脈打った。
「俺だったら多分二ページ目ぐらいで寝そう」
「だから、図書室では静かに…」
真嶋が喋る度に、頬に彼の吐息がかかる。身体が、熱く火照っていく。
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