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始まりの予感─7─

僕は自分のスマホの画像フォルダをタップした。画面いっぱいに映し出される、ぼやけた花火の写真。 「これって?」 「去年の塾の夏期講習の帰りに歩道橋から見えたんだ。遠かったからうまく撮れなかったけど」  息の詰まりそうな夏に見たあの花火は、僕にとって救いのようなものだった。どん、と腹の底に響くような音の後に上がる大輪の花が咲いては消えていくのをいつまでも見ていた。帰りが遅いと『あの人』に怒られたけれど、あの日は不思議と心が穏やかだった。僕の唯一の光り輝く思い出だ。 「じゃあ、今年は俺と一緒に見に行こうぜ」 「え」  思わず大きな声を出してしまい、慌てて口を押さえた。真嶋が人差し指を唇に当て「しーっ」と言う。誰のせいだと思ってるんだ、と心の中で呟いた。 「俺と一緒に行くのが嫌なの?」 「そういうわけじゃ、ないけど。お前、他の人に誘われるんじゃないの?さっき一緒にいた友達とか、彼女とか」 「さっきの奴らとは毎日のように会ってるからいいよ。それと俺、彼女いねーから」  彼女がいない。  そのことになぜかホッとしている自分がいた。

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