2 / 13
二人の恋人 その2
こうして、僕たちは怪しげな3P生活を始めた。
なんだか思い出すだけで、訳が分からなくなってくるので、生霊をユウジ、本物(?)を裕司ってする。
裕司とユウジは完ぺきに分離してしまっているんだけど、根っこの何処かは繋がっているようだった。
例えば、僕がバイト中に転んだりすると、それを見ていたユウジを通じて裕司に伝わる。「おい、今日は何もなかったか?」と、裕司に帰ってくるなり聞かれる日も少なくない。
それは逆もあって、裕司が怪我なんかをするとユウジにはわかるらしい。『お、ケンカか』とか、ユウジがいきなり言いだす時は、裕司は何も言わないけどちょっと怪我してたりする。
だから、そういう時は僕は何も聞かずに、少しでもささくれた裕司の気持ちが落ち着けばいいなと思って特別優しくしてあげる。
ユウジがいると裕司のことがすごくよくわかる。
以前は、裕司も僕もお互い口下手で、思うように相手を思いやれなくて、不安になったりイライラしたりすることが少なくなかった。
それをほんのちょっとユウジが仲介してくれることで、二人の距離はグンと近くなった気がする。
でも、そんなに良い事ばっかりでもない。
「もう、だめだよ」
もうすぐ裕司が帰ってくるだろう時間近くになって、ユウジが僕にイタズラを始めた。
「裕司が帰ってくるだろ」
毎晩、付き合いですごくお酒を飲んで帰ってくる裕司は、帰ってくるといつでも僕の作ったお味噌汁とお粥を食べるんだけど、その準備を始めたら、後ろからユウジにのしかかられた。
最初はさわさわとお尻を撫でる程度のいたずらだったのに、だんだんその手の動きが怪しくなってくる。
『同じ俺なんだからいいじゃん』
「あ、やんっ」
パジャマのズボンの上からぎゅっと股間を握られる。
お風呂上りでふんにゃりしてたのに、ユウジにむぎゅむぎゅされるうちにかたくなって来てしまった。
止めて欲しくて身を捩ったら、今度は手だけでなく、ユウジの腰がお尻に押しつけられる。
「あっ」
ぐりっとかたいものがお尻にあたる。
「ん、やっ」
僕の声に気を良くしたのか、ユウジは服越しでも形まで分かりそうなほど昂ぶったそれを、挿入を模すようにぐいぐいとリズムをつけて押し当ててくる。
『挿れてないのに、感じちゃうのか?』
「だって、前も……や、ああっ」
お尻に押し当てられながら、かたくなってしまった前も弄られてる
『前もぱんぱんになってるぞ? 気持ちいいんだろ?』
布越しに擦られて痛かったはずなのに、先走りがパンツを濡らして擦られる度に濡れた音がする。
もう、布で擦れる痛みなんて微塵もなくて、くちゅくちゅと弄られる度に、付け根の奥がそわそわしてくる。
後ろからはぐいぐいと突かれて、前は煽る様に弄られて、僕は堪らなくなってキッチンの床にへたり込んだ。
それでも、ユウジは逃がしてくれずに、項垂れた僕の項に唇を当ててくる。
ちゅっとそこを吸われるだけでも、お腹に快感が走る。
「も、だめ、裕司……帰ってきちゃう……あぁんっ」
『帰ってきて、志信がこんなトロトロで待ってたら大歓迎だぜ』
「ばかぁっ! あ、ああっ」
話しているうちに手がパジャマの内側に入り込んでくる。
お尻をぐりぐりされたまま、前を直接握られて扱かれ、腹を彷徨ってた手は乳首を弄び始める。
どれも直接的な刺激ばかりで僕はあっという間に追い上げられてしまった。
「も、や、ああ、あああ、ユウジぃ……」
背をのけぞらせ、後ろにのしかかっているユウジの胸に頭を押し付けながら、達しようとした瞬間。
ガチャッと玄関ドアが開いた。
「ただいま」
とだけ言って、ドアを開けた裕司が硬直している。
安アパートのキッチンは玄関ドアのすぐ隣。
床にはパジャマ姿で顔を真っ赤にして目を潤ませた僕が座り込んでる。
僕をいじめてたユウジはとっくにどこかに消えていない。居たとしても裕司には見えないけど。
「おか、えり……」
僕はもうどうしていいかわからず、ただ裕司を見つめていた。
「おう」
裕司はそれだけ言うと、黙って靴を脱ぎ部屋に上がり、僕の側に来るとまるで荷物でも担ぎ上げるように抱き上げた。
「ちょっと! 裕司?」
「悪りぃ、お前の顔見たらムラムラ来た」
「え!?」
そのまま部屋の中へ運ばれ、部屋の隅に畳んであった布団の上に降ろされた。
「いやらしい匂いがすんぞ」
布団の上に座っている僕の足元にしゃがみ込むと、裕司は僕の膝をぐっと開いて股間に顔を寄せた。
「やだ、そんな匂いっ」
「一人でしてたのか?」
「……ひとりエッチなんかしてないよ」
「うそつけ」
がぶっと股間を甘噛みされる。
「ひぃ、ん」
その刺激でパンパンになってた僕のものは吐精してしまう。
「あ、あ、あ……」
ちょっとだけだと思ったのに、どくどくと出てしまった。
「や、だぁ、もうっ」
「なんだ、達っちまったのか?」
こんな時ばっかり、甘くて優しい声で裕司が囁く。
いつもはもっとからかう様に意地悪なのに。
こんな風に甘くされたら、我慢が出来なくなっちゃう。
「裕司のばかぁ……」
僕はしゃがみ込んで僕を見上げている裕司の両頬を手で包み、引き寄せるようにしてキスする。
お酒の匂いがするけど、きっと裕司は全然酔ってない。
僕を見上げる目がギラギラしてる。
キスは倍返しで返された。
のしかかってきた裕司が、唇だけじゃなく、まくり上げたパジャマの胸元にもかじりつく。
「俺が居なくて寂しかったか?」
僅かな刺激でもビクビク感じてしまう僕を見て、少しだけ裕司が優しい顔をする。
「裕司ぃ……」
「俺も、帰ってくる途中、ずっとお前のこと考えてた」
そう言いながら裕司はネクタイを緩め、シャツをはぎ取るように過ぎ捨てる。
そして、ベルトを寛げて、にやりと笑って言った。
「欲しいか?」
「……ほしい」
ここまで来ちゃうと僕だって、出したって物足りない。
さっきまでユウジにぐりぐりいじめられてた場所に、裕司の熱いのが欲しい。
ごくっと喉を鳴らして唾をのみ込んだ裕司が、下着をずらして猛りを見せつけるように僕の前に突き付けた。
「しゃぶれよ」
「うん」
僕は両手でそっと茎を握り、口を開けて舌を伸ばして亀頭を咥えこむ。
鈴口に舌先を当てると、少ししょっぱい味がして、ぬるぬるが口の中に広がる。
(裕司も感じてる……)
ずっとユウジにイタズラされてた僕とは違い、裕司はまだ僕を見てただけなのに、こんなにかたくしているのが嬉しい。
ちゅっちゅっと音を立てながら、頬張った亀頭を唇で扱く。
裕司は硬く張ったエラのところを扱かれるのが好きだから。
夢中になってしゃぶっていると、不意にお尻に違和感を感じる。
「んっ!」
後孔に何かが触れている。
(え? ユウジ!?)
裕司は自分の茎をしゃぶっている僕の頬に両手を当てているし、その裕司に気づかれずに僕に触れるのなんてユウジしかいない。
指は僕の漏らした精液で濡れていて、つるっと入り込んでくる。
「ふっ、んんっ」
「しゃぶってて感じてんのか? 可愛いなぁ、お前は」
不意の刺激にビクンッと震えてしまうが、裕司は機嫌よく僕の頬を撫でている。
ユウジの指は遠慮なく中に入り込む。指二本くらいの太さがお腹の中を押してくる。
「ん、んぁ、あー……んぷっ」
「なんだ? 今日はえらい感じてるな」
まさか、アナタの生霊にお尻弄られてるとは言えずに、僕は色仕掛けで誤魔化すことにした。
「だって、もう、すごく欲し……から、ぁ」
膝立ちで立ちあがって、裕司の胸に頬を擦りあてる。
腰をしっかりと抱きしめて、胸で裕司の茎をぐりっと押しつぶすと「うう」と声が聞こえた。
「いきなり突っ込んだら、お前が痛いだろ?」
「だい、じょぶ……ね、もうちょうだい……我慢、できないよぅ」
「志信っ」
荒々しく布団の上に押し倒され、下着ごとパジャマのズボンが脱がされた。
「くっ、もう、我慢できねぇっ」
「裕司っ」
枕元に置かれている小物入れの中からジェルのチューブを取り出すと、裸に剥かれたお尻の上に直接垂らされた。
「ああ、あ……」
冷たいジェルがつつっと尻の狭間を滑るだけで身体の奥が疼く。
しかも、ユウジがまだお尻の中を弄り続けている。
ペニスとは違う細かな動きをするものが、お腹の中を刺激し続けるところに、太くて硬いものが押し当てられた。
「ま、まって! やっ! ああ」
「待てねぇ」
「ひ、ぃ、あああ、あんっあ……」
ぐっと押し込まれた瞬間、押し広げられる苦しさと同時に身体が跳ね上がるほど気持ちいい場所をぐりっと指で押された。
「やあ、あああ……」
僕はその刺激で再び達ってしまう。びゅくっびゅくっと茎が震えるたびに太腿に熱い精液がかかった。
「あぁ、すげぇな……お前ンなか、うねって、絞り上げてくんぞ……」
「ゆ、じ……だめ、だめ、おかしく、なっちゃ……ああっ」
ずんっと突かれる度に目の前がチカチカする。
裕司のペニスが腹の奥を突いて、ユウジの指が浅いところを弄くりまわしてる。
お腹の中をめちゃくちゃに弄られてるのに、すごくすごく気持ちいい。
「いぃよう……ああ、んっ、裕司……ユウジ……あんっ」
「ああ、俺も気持ちいいぞ。もっと閉めろ、俺が奥の奥まで突いてやるぜ」
「あああっ、やぁんっ、あんっ、ああっ」
四つん這いで後ろから突かれて、気がつけば、僕の下にユウジが居る。
「!?」
『可愛がってやるよ』
僕にしか聞こえない声でユウジは囁くと、僕の乳首に噛りついてきた。
「あああんっ」
僕の乳首を甘噛みしながら、手は僕のペニスの先を弄りはじめる。
指先でつまんで転がすように弄られたり、手のひらをあてて鈴口を捏ねる様にしたりと刺激を変えられた。
「あっ、ああっ」
「くぅっ……たまんねぇ……しのぶ……」
僕のものを捏ねられる度に、後ろに入ってる裕司のものをきゅんきゅん締め付けてしまう。
「も、無理、だめぇ、ああ、あ、あ、裕司ぃ、ああああ」
ひと際強く裕司に突き上げられて、僕は三度目の絶頂に達した。
もう殆ど精液も出なかったけど、お腹の中でどくどくと熱いものが注がれるのを感じながら、もう何も出ない僕のものをユウジにちゅうっと吸い上げられて……意識を失った。
「何だか、最近、お前とのエッチがすげぇ感じるんだよな」
意識を取り戻すと、僕を胸に抱えて布団に寝そべっていた裕司がそんなことを言った。
「今日も帰ってくる前からずっとお前のことが気になって、帰ってきたらお前がすげぇ美味そうになってるとか我慢できネェだろ」
「裕司……」
そりゃそうだ。
意識の共感がある生霊が、裕司が帰ってくる前に思いっきりエッチなことしてらっしゃいましたから。
裕司がエッチな気持ちになったから、ユウジが反応したのか? ユウジが反応したから、裕司がエッチな気分になったのかはわからないけど。
ぐったりと裕司の胸に頬をつけたまま、僕はこっそり溜息をついた。
このままじゃ、いつかエッチのし過ぎで死ぬかもしれない。
裕司とユウジが揃ってからは、こんな風に毎晩大盛り上がりなのだ。
それがまた気持ちいいのが悪い。
今日だって、裕司のペニスとユウジの指を一緒に頬張って感じちゃうとか頭がおかしくなりそうだった。
(拒めない僕が悪いんだろうけど……)
でも、どっちも裕司だから拒めない。
裕司とユウジに分かれても、二人は変わらず僕を大切にしてくれる。
エッチは確かに激しいけれど、彼らのどちらもが同じく僕を愛してくれている。
裕司は僕の為にのし上がろうと必死だ、今日だって明け方まで働いて、帰ってきて僕を抱いてる。
ユウジはずっと側に居て、僕の事を何かと面倒見てくれる。意地悪もするけど、優しくて、いつも僕を一番に考えてる。
僕にはまるで別々の人間には思えなくて、どちらも欠けて欲しくない。
裕司の胸に凭れている僕の髪を、ユウジが優しく撫でてくれている。
いつまでもこんな生活は続かないと思うこともあったけど、僕はずっとこのままでもいいなって心のどこかで思っていた。
ともだちにシェアしよう!