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裕司の僕 その1

「んぅ……ん」  二人で一緒に眠る時は、裕司の隣にぴったりとくっついて眠る。  裕司はエアコンを強めにかけて寝るので、僕には少し寒すぎる。  でも、寒いって言って夏でも冬でもぴったりくっついて眠れるので、僕的にはそんなに文句はない。  筋肉量の多い裕司は僕より暖かいし、腕に抱かれて眠るのはこの上なく幸せだ。  そんな温もりの中で薄く目覚め始めると、背後にぴったりと裕司が体を寄せて僕を抱きしめていた。  しかも、僕を抱きしめるように前に回された手は、パジャマの下に潜り込み胸の尖りを甘く捏ねてくる。 「んっ、ぁ……」  後ろからクンッとお尻を突き上げられると、その刺激で甘い吐息がこぼれてしまう。 「ぁ、う、ん……」  まだ眠い頭だけ置いてきぼりにされて、息がどんどん甘く熱を持つ。  中に挿ってはいないけど、裸のペニスが熱く湿って押し付けられている。 (熱い……)  夕べも裕司はたっぷり僕とセックスして、くたくたになって僕は気を失うように眠ってしまったのだけど、裕司には少し物足りなかったのかもしれない。  最近気がついたのだけど、どうも、ユウジは裕司が帰ってくると裕司の中に戻っているときがある。  そういう時の裕司は本当にパワフルで……絶倫で、死んじゃいそうになるくらい濃厚なセックスを仕掛けてくる。  僕もできる限りは付き合いたいのだけど、さすがに体格差も体力差も大きくて、途中でリタイアしてしまうことがあって、そういう時は続きは目が覚めてから……になってしまう。 「んんっ、くぅ……」  まだ眠いのに声が出ちゃう。  ぬるぬると滑りがいいのは、裕司の先走りだけでなく、僕の夕べの名残も溢れてきちゃってる。 「ふ、ぅ」  お尻をぬるぬる擦られて、しかもお腹の中に響くように突き上げられてる。乳首を捏ねられるのも堪らない。  僕はもう少し直接的な刺激が欲しくて、裕司のペニスに擦りつけるようにお尻を振った。  しかし、裕司は意地悪モードでなかなか擦りつける以上のことをしてくれない。 (目が覚めるくらい少し乱暴でもいいのに……)  裕司限定で僕は少しMっ気がある。優しいユウジも好きだけど、我慢できなくなって少し乱暴になっちゃう裕司も大好きだ。  もうちょっと気持ちよくなりたくて、僕はそうっと下に手を伸ばした。  お尻に擦りつけるだけの意地悪してくる裕司に気付かれないように、指先でペニスの先を弄る。  こっちもあふれ出ている蜜でぬるぬるになっていて、先っぽを指先でこねると堪らなく気持ちいい。 「ぁん、ゆぅ、じぃ……」 「なんだ? 俺が待ちきれなくてオナニーか?」  裕司が額に唇を当てて、意地悪く囁く。 (ん? え? あれ? おでこにキス!?)  どうして、後ろから僕を突き上げている裕司が僕のおでこにキスできるの!?  そう思った瞬間パチッと目が覚めた。  眼を開くと目の前にはニヤニヤしてる裕司の顔が……。 「え? え? うそっなんでぇっ……あ、あんっ」  ビックリしてパニックになった瞬間に、後ろを思いっきり突き上げられた。 「お前、ホントに可愛いなぁ……」  裕司は上機嫌で僕を抱き寄せると、ガバッと僕がかぶっていた毛布を引きはがした。 「にゃっ! あああっ!」  僕は身を竦めるように丸まったけど、手がペニスに触っているのも、トロトロのお尻も隠せてない。  ユウジが見えない裕司には、我慢しきれなくて僕がオナニーを始めたようにしか見えてない! 「やだぁっ!」 「ヤダじゃねぇ。ほら、続き」 「変態っ!」 「おう、変態上等。俺が欲しいんだろ? 自分でやっておねだりしてみろ」  完全意地悪モードに入った裕司がニヤニヤしながら、僕を仰向けに転がして両膝を掴んでガバッと開いた。 『おう、いい眺めだな』  僕の恥ずかしいところを見てるのはひとりじゃない。  僕を追い込んだ犯人のユウジが、裕司と同じくニヤニヤしながら覗き込んでいる。  僕は裕司に膝を開かれた状態で押さえつけられ、股間を覗き込んでいるユウジに後ろ孔をイタズラされ始めた。 「ね、ちょっと、許して、ゆうじ……」 「ほら、頑張れ。寂しいなら乳首舐めてやっから、チンコは自分で可愛がれよ」  そう言って、裕司が胸に噛り付いて来た。 「あ、ああっ、や、ああ」  同時にユウジが僕のお尻に指を入れてくる。  ひくんと震える身体を見て、裕司が呆れたように言う。 「なんだ、乳首だけで達っちまうのか?」  違うと言いたいけれど、まさか生霊と3Pになってるなんて言えない。 『お尻をもっと弄ってほしかったら、前もちゃんと触れよ』  指先だけで、ごく浅いところを弄られるのは全く放置されるより辛い。  膝を押さえこまれているのに、思わずお尻が丸く動いてしまう。 『ほら、もっと欲しいだろ?』 「気持ちよくなりてぇだろ?」  ああもう、本当に、二人ともそっくり!  でも、僕もそんな二人には抗えずに、おずおずと自分のものに手を伸ばした。 「んっ、あぁ……」  茎を握るだけでくちゅっと音がするくらい濡れそぼったペニスは、自分が思ってたよりずっとかたく張りつめている。 「ん、ふぅ、ん、あ、んん」  僕が触りはじめると同時に、二人も動き出した。  裕司は僕の乳首を舌先でちろちろと擽り、ユウジは少し深いところまで指を入れてお腹の中から僕の内側を弄りはじめる。 「や、ああ、ん」  まだ眠っている内から、僕の中で燻りはじめていた快感が一気に噴き出してくる。  僕も夢中になって自分のペニスを握り、その先を手のひらでぐりぐりしてしまう。ぎゅっと力を入れるたび、ぷちゅっと蜜が溢れるのを手のひらに感じながら、もっともっとと胸を突きだし、お尻を揺らしてしまう。 「エロいな、お前は」 『可愛いな、志信』  同じ声が左右から別のことを囁かれた。 「も、ねぇ、おねが、いっ……あ、ああん、ゆ、じぃ……」  どっちの裕司にもおねだりする。 「しかたねぇなぁ」  裕司は笑いながら舌なめずりをして、僕を俯せに寝かせた。 『お尻はこいつに譲ってやるか、でも、お前の口は俺のだ』  ユウジはそう言うと僕の口元にガチガチに張りつめたペニスを突きつけてきた。  僕が口を開けてユウジのその先を口の中に含むと、獣が唸るような低い声で呻きながら裕司が後ろから押し挿れてきた。 (あ、おっきい……)  夕べも抱かれて、朝からユウジにイタズラされてた後ろ孔は痛みなく裕司を受け入れるけれど、それでも下腹を強く圧迫する重みは相当なものだ。 (こっちも……)  口の中に挿ってきたペニスも太くてズシリと重い。高くエラの張った亀頭を含んだだけで口の中がいっぱいになってしまう。両手は四つん這い自分を支えるためにベッドについているため、茎を手で扱いてあげることができないが、その分目いっぱい舌を這わせて吸い上げた。 「く、ぅ……たまんねぇな……」  裕司が僕のお尻を荒々しく突き上げながら喉を鳴らす。 『感覚は共有されてるからな、志信の中を犯しながら、同時に口の中も感じてる』  僕だけが二人分じゃないんだ。そう思うと嬉しくなる。  裕司とユウジに愛されて、僕だけが気持ちいいばっかりじゃなくて、裕司にもユウジにも僕がいっぱいしてあげられるなら嬉しい。 「志信」 『志信』  極まって、堪えきれないと掠れた声が僕の名を呼ぶ。 「んんっ、んっ、あああぁっ!」  お腹の中とお尻、口の中と顔に熱い飛沫が注がれるのを感じる。  ユウジの吐き出したものは目に見えないのだけど、そこに熱く滴っているのを感じて、指で拭い取って舐めてみた。 (にが……)  背中にぴったりとのしかかる裕司の重みと、ユウジの精液の苦みを感じながら、二人分だけど一人の男の重たくてたっぷりとした愛情を、僕はひしひしと感じていた。 「出張?」  怠い身体を起こして、バスルームでもちょこっとイタズラされて、朝食にパンを焼いていたら裕司が言いだした。 「本家の組長(オヤジ)が毎年、傘下の連中連れて行く北海道のゴルフだよ」 「ああ、慰安旅行ね」  本家の組長と幹部、その傘下組織の組長と幹部が参加してのゴルフコンペで、裕司は毎年連れて行かれている。  ゴルフなんて会社勤めの営業マンとかが頑張るイメージだったのだけど、ヤクザも結構好きらしい。 『金賭けるからな』  とはユウジの弁。なるほどね。 「いつから出るの?」 「明後日だ。服はいつも通り適当に詰めてくれ、足りねぇもんは向こうで買うから」 「2泊3日ならボストンバッグでいいかな」 「ああ、後は飯島を連れてく。小柳は置いてくが、事務所に詰めさせるからお前一人で留守番だが大丈夫か?」 「子供じゃないんだから大丈夫」  僕は焼けたパンと、サラダ、ベーコンとソーセージのソテーにオムレツを裕司の前に並べる。  裕司は僕が向かいに座るのを待って、ガツガツと目の前の料理を腹に収めて行く。  食べっぷりがいいので見ていて気持ちがいい。  裕司を眺めながら僕もオムレツを食べてから、食後のコーヒーを淹れ、いい香りが漂い出した辺りで裕司がぽつりと言った。 「……地元、帰ってみるか?」 「え?」  地元というのは裕司と僕の生まれ故郷の事だろう。  裕司は高校を中退して出て行き、僕も高校卒業と同時に東京に出てきた。  それ以来、一度も帰っていない。  ヤクザになった男と、その男について行ったできそこないのオカマ。  向こうにいる人たちはみんなそう言う。  理解されるとは思ってもいないし、理解してほしいとも思わない。  僕はオカマじゃないけれど、男の裕司しか愛せないので、親の望むような結婚はして上げられない。  裕司も今更ヤクザを辞めて、親の会社に就職して裕司の兄たちを支えることはできないだろう。  だから僕ははっきりと言った。 「僕は別に帰りたくない。僕にはもう故郷は無くて、ここで裕司と一緒に生きてくんだから」  それは僕の本心だった。  不義理だと言われても親の葬式にも戻る気はない。  高校卒業した日の夜に、裕司が迎えに来て僕の手を引いてくれた時以来、気持ちは何も変わっていない。  そう言うたびに、裕司は複雑そうな顔をして僕を見る。  裕司は時々僕の手を放そうとする。  僕はヤクザでもない。刺青も入れてない。指も詰めてない。  裕司の関係者で公安にはチェックされてると思うけど、それでも裕司から見たら堅気に戻れる可能性がある。  それを裕司はずっと気にしている。  決して僕に離れて欲しいわけではないのだけど、戻してやった方がいいんじゃないかと思うみたいだ。 「僕も刺青入れようかな。裕司の鳳凰、綺麗だからああいうのがいいな」 「阿呆。そんなん止めとけ。折角の白い背中、汚す必要はない」  その背中見て悩んでるのは裕司じゃないか。  それを口には出せない。だけど、裕司は僕が今のままである限り悩み続けるだろう。 「僕は裕司とずっと一緒だって言ったろ」  むすっと黙り込んだ裕司の隣に、僕は少し乱暴に腰かけるとぎゅっと裕司に寄りかかった。 「離れる気、ないからね。裕司が逃げても」  絶対。ないからね。

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