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Ⅰ 初恋のつづき⑥
………………あれ?
なんで?
体から力が抜けていく。
チュプチュプ、チャプチャプ
力を込めて、彼を押し返さなくてはいけないのに。
チュプチュプ、チャプチャプ
体に力が入らない。
「気持ち良さそうな顔してる」
大きな手が襟足を梳いた。
舌をつついて呼吸の合間をついて、吐息が耳のひだに絡まる。
熱い。
息も。
呼吸も。
キスが再開される。
唾液を鳴らして、好きの気持ちが口の中で繰り返される。
体から力が抜けて、立っていられない。
「もっと俺に寄りかかって……尋斗さん」
肩を抱かれて、吐息を奪われる。
キスが変だ。
呼吸がおかしい……
ハァハァハァハァ
意識が白く染まっていく。
(いけない)
飲まれては。
けれども、意識が引きずり込まれる。白い世界が、薄く霞がかって濁っていく。
「尋斗さん、お仕事たいへんなんですね」
そうじゃない。
なのに、声さえ返せない。
瞼が重くて、開けていられない。
意識が白い……
どこかで月光の色をした声が響いた。
「お疲れ様です。尋斗さん……」
腕の鼓動、あっかいな……
温もりの誘惑に意識が堕ちていく。
意識が眠っていく。
俺、抱きしめられているのかな。
温もりが心地良い。
もう少しだけ………三樹。
………じゃない!
俺は、君と一緒にいたんだ。
………………「晴君!」
「はい」
「わっ」
ビックリした~★
「耳元で大きな声出すな!」
「ごめんなさい。尋斗さんに呼ばれて嬉しくなっちゃって」
可愛いな。
晴君は。
大きくなっても、こういうところは変わらない。
………………ん?
(なんでだ?)
どうして耳元、こんなに間近で晴君の声が?
「フぅっ」
「わっ」
「尋斗さん、ビクンッ……てなって可愛い」
「大人をからかうな!」
だから、なんでっ?
吐息が耳たぶに吹きかかるんだー?
腕が頭の後ろから伸びている。
どうして?
「尋斗さんにくっつきたいから」
「そうじゃない!」
俺、晴君に。
(抱き枕にされている)
彼の柔らかな髪に触れている。
指先に髪を絡めて、俺の頭を大きな手が撫でる。
「上着、脱がせました。でも、くっついてたら寒くないでしょ」
シャツ一枚で。
隣に晴君が寝ている。
真っ白いシーツの上で。
天井が高い。
ここはベッドだ。
俺と晴君が大きな……おそらくキングサイズのベッドの真ん中で、ぴったり体をくっつけて寝ている。
腕枕されて。
ここは……………
「どこなんだァッ?」
「ホテルです」
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