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Ⅰ 初恋のつづき⑧

「尋斗さ……」 肩を抱かれそうになって、身をよじってよけた。 その拍子に、結んでいた小指かほどけてしまった。 ……一瞬。 晴君が傷ついた面持ちを見せたのは、気のせいだ。たぶん。 なにか言わなきゃ。伝えなきゃ。 なのに胸の奥が苦しくて、喉が締めつけられて、言葉が出ない。 それでも言わなければ。 「君は三樹の」 大切な親友 大切な親友の息子 大切なのはどっち? 親友の方? 親友の息子の方? どちらが大切で関係を壊したくない……から……だと伝えたいんだろう。 (そもそも三樹と俺は親友なのだろうか?) 俺が一方的に…… 「こんなに元気なら、もう大丈夫ですね」 にこりと笑った君は俺に触れてこない。 「じゃあ、しましょう。尋斗さん」 「え?なにを?」 「種付け♪」 …………………………は? 「夫婦の営み」 「………」 「子作り」 「………」 「セックス」 「………」 「チョメチョメ」 「………」 「ベッドの上で獣になりましょう」 「ならん」 「………」 「………」 「性交」 「………」 「………」 「………」 「尋斗さんには、なんて言ったら分かりますか」 「分かっとるわ!」 君のやりたい事くらい。 そもそも俺達は夫婦じゃない。 「未来の夫婦ですよ」 「でも今は夫婦じゃない」 ゆえに夫婦の営みは却下。 「子作り」 「できん」 雄α同士で受精は不可。 ゆえに子作りも却下。 「セックス」 「する必要ない」 「チョメチョメ」 「……って、なに?」 「ベッドの上で獣に」 「ならん」 「性交」 「ひとりでしてろ」 「それ、オナニーです」 「………」 とにかく! 「君のやりたい事くらい分かっている」 「じゃあ、話は早いですね!ヤりましょう!」 「ヤらんーッ!!」 俺は、元気だ。元気いっぱいだ。 ベッドで寝ている必要はない。 出ていくぞ。 「でも尋斗さん」 スプリングが少しだけ弾んだ。 「ラブホは、そういうコトをする所ですよ」 ベッドから下りようとした俺な手を後ろからそっと、君が握った。 「ね?」

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