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Ⅱ 夜を焦がす星の檻⑫

チリリと痛んだ鎖骨にふわりと柔らかな髪がくすぐった。 濡れた舌がちろりと舐める。 鎖骨に散った赤い花びらの痕を。 「あっ」 声を聞かれるのが恥ずかしくて顔を背けたけれど、キスする唇を止めてくれない。 左の鎖骨の口づけと同時に脇腹を撫でられ、ハッと息を飲む。体がビクンと震えた。 「嬉しいです。尋斗さんが感じてくれて」 気づかれてた。 (年下の……親友の息子に喘がされているなんて。俺、どんな顔して君を見れば……) 「だめですよ。俺を見て」 嫌だ……と、そう伝えたい声すら、胸の実をついばまれて喘ぎに変えさせられる。 拒絶は許してくれない。 君から、逃れられない。 脇腹を撫で上げられて、ゾクリと喉が震えた。 (これは、快感?) 「やぅっ」 なに? 今の声。 俺が上げたのか? 小さな胸の実を潰されて、摘ままれて。 ハァハァハアハァ 呼吸が上手く紡げない。 ハルくん…… (たすけて) 「うん。やっと俺を見てくれましたね」 滲む視界を、君の瞳が照らした。 俺は泣いているのか…… 「あなたを泣かせるようなことはしませんよ」 じゃあ、どうして。 「でも気持ちよくさせたいんです。許してください」 声すらも君は輝いているんだ。 真っ暗な気持ちの中にさえ差し込んでくる朝日のように…… これは涙だけど。 涙じゃない。 朝日に濡れる朝露のようなもの…… 「綺麗です。尋斗さん」 濡れた頬を濡れた舌がついばんだ。 (俺なんかより……) 注ぐ双眸の君の月明かりの方が、よっぽど綺麗だ。 君の光に溶かされる。 とろかされていく。 君は、俺の欲しかった……… 「あっ」 声を上げたのは君だった。 「そんなに以外かな?」 俺が君を抱きしめるのは…… 予想以上に広い背中で、筋肉質だ。 「君が愛しい」 大切だ。 だから………… 君の厚い胸板を弾いた。 思いきり。 予想していなかったのだろう。 ベッドが弾んで呆気なく、君は呆気なく尻餅をついた。 言い訳だ。 そう思ってくれて構わない。 これは保身だ。 君を守るためであり、俺を守るための。 俺達はこれ以上、進んじゃいけない。 君だって分かるだろう。 「出よう」 晴君、ありがとう。 「夕食は俺が作るよ」 「尋斗さん!」 その大きな手が俺を背中ごと掴んだ。 「君は俺を泣かせる事はしないって言っただろう。帰るよ」 「だったら、どうして」 振り返らない俺の髪の毛を、大きな手が撫でた。 「あなたは泣いているんですか」 ちがう。 涙じゃない。 涙なんかじゃ…… 「あなたを無理矢理、犯します」 声は背後から鼓膜をうがった。 湖面に沈んだ月のように。 「同意はいりません。薬を使った時から、そういう気だったんです。強姦罪成立です」 振り向いた君の月光が、青い陰を落とした。 「雄を咥えたくて淫乱マンコをヒクヒクさせているくせに。睨み付けたって無駄ですよ。文句があるなら、勃起している可愛いイチモツを隠したらどうですか。 ……デカマラ好きの童貞Ω」

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