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Ⅱ 夜を焦がす星の檻⑬
愛の定義が崩れていく。
シーツに体が縫いつけられる。
君の体重で。
「硬いですね」
「アゥ」
大事な場所が熱い怒張に押さえつけられる。
(当たってる!)
「ソレっ」
「『ソレ』ってなんですか?」
クスリと漏れた笑みが耳朶に落ちる。
「ちゃんと言ってくれないと分かりません」
「はふっ」
まただ。
また服の上から、硬くておっきいやつ。
「膨らんでるやつ」
「ちゃんと言いましょう。尋斗さん。俺に分かるように」
その場所の名称を知らない訳ではない。
しかし、ソコは口にするのもはばかられる恥ずかしい場所だ。
「分かるだろう」
「分かりません」
アフフ~
まただ。既にしっかり硬度を持って、恐らく上を向いているソレを、臍の下から下腹部に押し付けてくる。
言わないと、君がソノ場所をこすり付けるのをやめてくれない。
「尋斗さん、教えてください。なんで、そんなに真っ赤になってるんですか」
「当てる……から」
「なにを?」
「ち……」
ダメだ。
健全な成人男子が、口に出して言うべき言葉ではない。
そうだ。
保健体育の教科書に載っている名称で……
「いんけ……」
否、それともカタカナで言った方がいいのか。
「ペニ……」
英語は一般的すぎる。いっそドイツ語にした方がいいだろうか。
「シュヴァン……」
なぜ俺はアソコの名称に詳しいんだァァーッ
(べ……別にドイツ語は知っていて普通だ。精え……白いのだって、ざー…めんって言うじゃないか)
「尋斗さん、俺を焦らして……よっぽどコレが大好きなんですね」
「アヒん」
なんて声出してるんだ。自分の声だなんて信じられない。
ちがう!
俺は……
(こんな声)
いかがわしく濡れたこえなんか出さない。
だって、俺は……
(ちがう)
大好きなわけない。
「ちんこなんか嫌いだ!」
「………」
「~~~」
……言ってしまった。アレの名称……
「………」
「………」
「うそつき」
「なっ」
「勃起してるくせに~」
「これはっ」
俺は……
誰がなんと言おうとも。
「大嫌いだァァッ」
「なにが?」
「………」
「なにが嫌いなんですか?」
「ち………こ」
「え?」
「ち……ん…こ」
「もう一回言ってください」
「~~~」
「ねぇ、尋斗さん♪」
「……言わない」
そんなことより!
「あぅふー」
股間の熱がますます硬くなって擦ってくる。
「ちゃんと言っただろう。もう当てないって」
「ちんこでひとくくりにしないでほしいな。俺、デカマラだから」
瞳の奥が弧を描いた。
「残念です。俺に分かるように、ちゃんと言い当てられなかったので、あなたを俺の好きなようにします」
影が重みとなって、再び俺をシーツにくくりつけた。
「君はっ」
「好きだから奪います」
「そんな事をしたら、君はっ」
月陰は小さく揺れた。
ひとりで綺麗に。
ただ、ひとりで……
「あなたの……」
ふわりと舞い降りた掌が左胸で、俺の心音を聞いている。
「全部を奪うから」
あなたの……
罪悪感さえも奪います。
俺が全部………
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