14 / 19

Ⅱ 夜を焦がす星の檻⑭

「父を好きになったのは、いつ?」 首筋に吸いついた唇が耳朶を弄った。 「そんなのっ」 「出会ったのが高1なら、2学期くらいですか?でも尋斗さん、無自覚だからもっと後かな」 「俺は、三樹を」 「3学期」 「恋愛対象だとはっ」 「2年になる前。クラス編成で別々になったら……って考えたら、急に意識し始めた。そうでしょう」 唇をなぞった、顎を持ち上げる。 「分かりやすいな。顔に出てる」 視線を背けて、その手を拒んだけれど。 手は再び顎を持ち上げた。 「俺、高2です」 口角に唇を落とす。 俺が逃げないように。 目を背けないように。 キスは枷だ。 「あなたが恋をしたのと、同じ年齢ですね」 触れた唇が…… 「恋のつづきをするのに、ちょうどいいんじゃないですか。同じ年齢です」 笑ったのに。 なぜ瞳は悲しくむせぶ? 君の瞳はせっかく俺を閉じ込めたのに…… 「三樹と君は違う」 「同じに見てくれた方がいいですよ」 どうして? 「父と同じに見てくれたら……」 月光が降りる。 「俺は救われていましたよ」 俺は君を傷つけた。 君という個人を認める事が、君を追いつめた。 (人を好きになる事は……) (どうして、こんなに不自由なんだろう?) それでも人を好きになる。 君はなぜ、こんなに強い輝きで俺を見つめるのだろう。 君じゃなかったら…… 君だから…… 両方の思いが交錯する。 交わる事のない思いが、それでも近づこうとしている。 一つだけ確かなのは、俺はもう君から逃れられない。 「お喋りはおしまいにしましょう。あなたが誰を俺に重ねても構いません」 俺はいま 「あなたを抱きたい」 冷たい手が、なだらかな胸を滑り降りた。 「あなたが本当は欲しかった父の温もりを、俺が再現してあげます」 「君は君だ」 俺は君を傷つける。 「だったら、これが俺の愛し方です」 あなたの初恋の人に成り代わる事が…… 「俺を愛してください。どちらでもいいから」 優しい手が臀部を撫でた。 「お股開けますね?」 俺を受け入れるあなたは…… 「大股開きするんですよ」 君が俺を犯す。 意識から犯される。 とろかされる…… これはきっと、互いで互いの空白を埋める行為で。 今の俺達には必要なんだ。 空白を埋められるのは、 (君しかいない) (あなただけだから) その手が、俺の大事な場所を暴く。 「愛したのが、あなたで良かったです」

ともだちにシェアしよう!