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Ⅱ 夜を焦がす星の檻⑭
「父を好きになったのは、いつ?」
首筋に吸いついた唇が耳朶を弄った。
「そんなのっ」
「出会ったのが高1なら、2学期くらいですか?でも尋斗さん、無自覚だからもっと後かな」
「俺は、三樹を」
「3学期」
「恋愛対象だとはっ」
「2年になる前。クラス編成で別々になったら……って考えたら、急に意識し始めた。そうでしょう」
唇をなぞった、顎を持ち上げる。
「分かりやすいな。顔に出てる」
視線を背けて、その手を拒んだけれど。
手は再び顎を持ち上げた。
「俺、高2です」
口角に唇を落とす。
俺が逃げないように。
目を背けないように。
キスは枷だ。
「あなたが恋をしたのと、同じ年齢ですね」
触れた唇が……
「恋のつづきをするのに、ちょうどいいんじゃないですか。同じ年齢です」
笑ったのに。
なぜ瞳は悲しくむせぶ?
君の瞳はせっかく俺を閉じ込めたのに……
「三樹と君は違う」
「同じに見てくれた方がいいですよ」
どうして?
「父と同じに見てくれたら……」
月光が降りる。
「俺は救われていましたよ」
俺は君を傷つけた。
君という個人を認める事が、君を追いつめた。
(人を好きになる事は……)
(どうして、こんなに不自由なんだろう?)
それでも人を好きになる。
君はなぜ、こんなに強い輝きで俺を見つめるのだろう。
君じゃなかったら……
君だから……
両方の思いが交錯する。
交わる事のない思いが、それでも近づこうとしている。
一つだけ確かなのは、俺はもう君から逃れられない。
「お喋りはおしまいにしましょう。あなたが誰を俺に重ねても構いません」
俺はいま
「あなたを抱きたい」
冷たい手が、なだらかな胸を滑り降りた。
「あなたが本当は欲しかった父の温もりを、俺が再現してあげます」
「君は君だ」
俺は君を傷つける。
「だったら、これが俺の愛し方です」
あなたの初恋の人に成り代わる事が……
「俺を愛してください。どちらでもいいから」
優しい手が臀部を撫でた。
「お股開けますね?」
俺を受け入れるあなたは……
「大股開きするんですよ」
君が俺を犯す。
意識から犯される。
とろかされる……
これはきっと、互いで互いの空白を埋める行為で。
今の俺達には必要なんだ。
空白を埋められるのは、
(君しかいない)
(あなただけだから)
その手が、俺の大事な場所を暴く。
「愛したのが、あなたで良かったです」
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