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Ⅱ 夜を焦がす星の檻⑰

この手を伸ばしたのは、なぜだろう。 誰の温もりが欲しくて? この手の先に、そんなものありはしなくて…… それは、俺の造り上げた幻想で…… だから、この手をすくう温もりは存在しない。 筈なのに。 受け止めてくれたのは、君だった。 星が星を引く 。 闇にあって、見えない力で。 (この引力が) どんなに離れていても、広大な(そら)のどこにいても、必ず彗星が長い夜を越えて帰ってくるように。 この場所に。 帰る場所を灯す膨大な熱量が、俺を抱きしめる。 心臓が熱い。 君の左胸から聞こえてくる。 君が奏でている。 晴君の腕をぎゅっと掴んで、引き寄せて、そのまま大きな背中を引き留める。 「わっ」 繋いだ手を引き寄せて、図らずも俺が君を抱きしめる体勢をつくった。 「尋斗……さん」 驚いたか? 君のそんな顔見たのは久し振りだな。 君に垣間見る幼さに、胸がほっと息を奏でた。 人を好きになる気持ちは、不自由だ。 不自由な気持ちを君に押し付けようとしている俺は、卑怯で不甲斐ないね。 でも、今だけ…… 「尋斗さん。俺、どこにも行きませんから」 俺から離れないでくれ。 (かいな)(いだ)かれる。 胸板厚い。 心臓がドクンドクン鳴っている。 君も緊張してるのか? 強くきつく抱き寄せる君から、雄の匂いがした。 「はる……くん」 なんだろう? 君から甘い香りがする。 雄の匂いで、なにかとても懐かしくて……欲しくなる。 甘いわけじゃないのに、蕩けていく。 意識がゆっくり、ゆっくり溶かされる。 酸素が足りない。 そうじゃない。 理性が少しずつ、崩される。 見えないものに、ゆっくりと…… 「尋斗さんが雌化してるんですよ」 君の声が囁いた。 「俺のΩにしてあげます」 また君はそんな事を言って。 「俺をからかう」 「本気ですよ」 本気で…… あなたを抱きしめて。 あなたを抱いて。 あなたという人を、俺に刻んで。 あなたの中に俺を刻みたい。 うなじに指先が触れた。 「この痣は生涯消しません」 赤い痕をそっとなぞった。 「あなたと将来を誓うから」

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