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第6話

「こんにちわー、居るかねー」  外で大きな声がしてそれからインターフォンの呼出音がピンポンピンポンと慌ただしく続けて鳴った。 「ちょっと失礼するね。はい……」 「おー! 田中だ、ちょっと探して欲しいものがあって来たんだが」  インターフォンから漏れる声と外の声が同時に聞こえる。   「今あけます」 「わたくしがお迎えしてきます」  実玖(みるく)はすかさず玄関に向かい、さっき入ってきた戸の鍵を外すと勢いよく男性が入ってきた。 「いらっしゃいませ」  実玖は後ろに一歩下がり頭を下げる。 「なんだ、助手か? (ぼん)も偉くなったもんだな」  わははと笑いながらさっさと玄関へ向かって行ってしまった。追いかけて玄関へ行くと既に勝手知ったると言うように草履を脱ぎ始めていてそこを伍塁が迎えていた。 「田中さん、お久しぶりですね」 「探して欲しいもんがあってな、昔うちにあったもんなんだが」  伍塁に付いて歩き出しながらもう話を始め、仕事用の応接間に入っていった。何を言っているかはっきりはわからないが大きな声で話している。  さっきポンポンと伍塁に触れられた感触を思い出し、肩に手を重ねてから台所に向かった。実玖も勝手を知っている。初めての仕事はお客様にお茶を出すことだ。 「いやーどうってことない、価値のあるものでもないんだがなー。うちにも昔あったがどこに行ったかわからん。懐かしくてどうしても欲しくなってなー」  口ぶりは落ち着いているが、前のめりで伍塁に圧をかけるような態度である。 「それならうちにあると思いますよ。確か三号ですけど……」  伍塁が話している途中で台所の方からガタンと大きな音がした。 「ちょっと失礼します」  伍塁は立ち上がり部屋を出ようとした。 「あるならすぐに探してくれ、今日は時間があるからここて待たせてもらう」  鷹揚な態度で田中は腕を組んでソファに背中をつけていた。伍塁は表情を変えず頭を少しだけ下げて襖をあけて台所へむかった。 「どうした?」  伍塁が覗くと実玖が足を押さえてしゃがみこんでいる。 「申し訳ありません。私の体が思ったより大きくてテーブルにぶつかりました」 「どこぶつけたの? このテーブル重たいから気をつけてね、戦ったら負けるから。こんな狭いところに置いてあるのも悪いんだけど」  伍塁は実玖の横に膝をつき、アンティークテーブルの脚と実玖の足を交互に見た。さらさらと流れる前髪とつむじが実玖をムズムズさせる。  伍塁は口の中で何か呟きながらテーブルと実玖の足に手を当てた。 「仲良くしてね」  優しく声をかけてから顔を上げて立ち上がり、実玖の手を引き上げた。

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