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淡い記憶

 伊月先輩の協力により2時間で終わらせた俺は事故らない程度に車を走らせ、自宅に向かう。 急いでるはずなのに、さっき伊月先輩に話したナオちゃんと初めて出逢った日を思い出していた。  東京生まれの俺は小さい頃から母といることが多かった。 父は俺が生まれる前から大阪に単身赴任していたから週に1回しか帰って来なかったんだ。 でも、土曜日の夜に帰ってきてから月曜日の朝までの間は遊んでくれたし、日曜日は色んな場所に連れてくれた。 多少のわがままは聞いてくれたし、優しい父だから僕は大好きだった。 だから、花火を見に大阪へ行くのも喜んでいったんだ。 母は連れていかない代わりにお友達を紹介するって父が言うからより嬉しかったし。  仕事仲間の息子だと紹介されたのが、ナオちゃんだった。 赤毛で猫毛で白い肌の俺とは違う黒くてストレートで浅黒い肌のナオちゃんは俺を警戒して睨んでいた。 父が話しかけてもそっぽを向くナオちゃんに父は戸惑っていたけど、俺はとても素直だと思って好きになったんだ。 だから俺は好きなものを父に言って、買ってもらったらナオちゃんと分け合うことにした。 『おれは好みじゃあねぇけど、仕方ないから食ってやるよ』 ぶっきらぼうに言うけど、頬が赤いのはわかってたんだ。 俺はわたあめを持ち、ナオちゃんはりんご飴を持ちながら並んで立って花火を見る。 俺の地元よりも多い人と打ち上げ花火の種類に見惚れた。 『きれいだね、ナオちゃん』 俺は精一杯の笑顔を向けて言った。 目を見開いたナオちゃんは笑わず、俺をじっと見つめたんだ。 どうしたのか顔を近づけると、慌ててそっぽを向いてしまった。 『花よりだんごや……りんごやるからわたくれ』 『かんせつキッスになっちゃうよ』 僕は勇気を持って言うと、大きく身体を震わせたナオちゃんはうつむいた。 『お前ならええわ』 恥ずかしそうに言うナオちゃんを見て、僕は完全に落ちちゃったんだ。  

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