9 / 19

お見通し

 自分自身の威厳を潰すことになるし、なによりプライベートで小柄な自分が大柄な俺に抱かれているのを思い出して、興奮してしまうと教えてもらった。 でも、俺はいじめたくなって、職場で時折立とうとするんだ。 そんな説明をしている間に唐揚げを揚げ終え、レタスとトマトが添えられた深皿に唐揚げを盛り付け始めたナオちゃんの背中に俺はくっついたまま。 左耳をたっぷり舐めた後、後頭部にキスを落とす。  「今日早く終わったのは、伊月先輩が助けてくれたからなんだよ」 「いつきが……あいつ帰ったと思ってたのに」 悔しそうに言うナオちゃんにふふふと妖しげな声を漏らして笑う俺。 「なんか仕掛けてくると思ってたから、今日記念日だって伊月先輩に言っといたんだ」 俺は右頰から左頬に大きく音を立てながら、唇を押し付けていく。 「ユタカは全部わかってたん?」 「うん……ゴンさんと何してきたのかも、お・み・と・お・し♪」 俺が首筋に強く吸いついたので、掠れた声で喘ぐナオちゃん。 「キレイについたね」 「ア、アハッ……アッ」 満足気に付けた痕を指の腹で撫でると、ナオちゃん電流が走ったようにピクピクと震えた。  いつもの場所っていうのは激安スーパーのこと。 夕方のタイムセールに走っていって、多い分は2人で分け合う決まりがあると、ゴン主任から密かに聞いていた。 ナオちゃんは俺のためにだし、ゴン主任はある人のために手料理を練習しているらしい。 きっと今日は本番なんだろうな。 その相手はさっきまでの様子ではなんにもないと思っていたようだから、今頃どうなっているかめっちゃ気になるけど……まぁ、明日に楽しみはとっておくことにする。  「偽装彼氏は別にいいけど、あんなにアピールするなら……伊月先輩ともっとイチャイチャしてもいいよな?」 左耳に重低音な声で囁く俺に顔を小さく横に振るナオちゃん。 盛り途中の菜箸を置き、身体を俺の方に向けて抱きついた。 「中居悠貴はおれのもんや、他の奴に渡すなんて考えられへん!」 大声で叫んだ後、うう〜と子どもがぐずるような声を出すナオちゃんの頭を俺は母親のように優しく撫でたんだ。

ともだちにシェアしよう!