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俺らの関係
でも
「俺、義理やけどお前の兄貴なんやで」
苦しそうに言うナオちゃんを見て、俺は撫でる手を止め、目を閉じた。
ナオちゃんは竹富食品の社長の息子なのは前に言った通り、しかし実は俺も社長の息子。
ただ、ナオちゃんは正妻の子、俺は愛人の子。
そしてどんなに愛し合っていても、父親が同じだから戸籍上は兄弟にしかならないんだ。
花火大会で仕事仲間の子どもなんて父は俺に紹介したのは俺への気遣いだった。
父……竹富貴志 は竹富食品株式会社の社長。
そして、人事部の部長の美千代 さんが妻でナオちゃんが息子。
それが本当の家庭なんだ。
俺と母との幸せは本当はあってはならないもの。
残念ながら、それを知ったのはここ数年さ。
ナオちゃんとの別れの危機を脱し、ニートだった俺を竹富食品への入社を父が認めてくれた4月。
内定者面談の相手が美千代さんだった。
「夫が優しくしたとしても私は知りません。出世や待遇が恵まれると思い違いをしないでくださいね」
さすが、社長夫人……しっかりしてるなというのが第一印象。
なぜこんな人より母を選んだのか、俺にはわからなかった。
「そんなものには興味がありません。働かせていただけるだけで嬉しいです……どうぞ存分にこきを使ってください」
ナオちゃんを落としたらしい笑顔を向けて平然と言うと、美千代さんはワナワナと震えていた。
だから、ナオちゃんの部署に配属されたのは未だに謎なんだ。
「それでも、俺はナオちゃんを離さないよ」
俺は口角を上げてナオちゃんを見つめ、キスをしようと顔を近づけた。
「恨むからか?」
キスを避けたナオちゃんから出たのは俺が想像もしなかった言葉。
「恨むってナオちゃんを……なんで?」
「お前の方が優秀なのに、おれが正妻の子やから偉い
役職に就いてる……おれがお前の父親も名誉も奪ったから恨んでいじめるんやろ」
俺を見つめたナオちゃんの目は真っ直ぐだった。
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