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#2-5

だらだらと二時間近く飲み、「フランダー」を出る頃にはまあまあ酔っていた。 以前なら適当な相手を捕まえてホテルへ向かうところだが、俺の足は自然と駅への道を辿る。 金曜だし。酒入ってるし。なんだかいろいろあって疲れたし。 蒸し暑いような電車内で揺られながら、俺の腐った頭の中で渦巻くことはただひとつ。 ヤりたい。 めちゃくちゃ突っ込まれたい。 いっそ朝までヤりまくって、明日は日が暮れるまで寝ていたい。 公共の場で口に出そうものなら即通報ものだが、思うのは勝手だ。俺は善の身体や最中の仕草や、暴力的なまでの快楽に翻弄される感覚を思い出しながら、最寄り駅までの二十分ほどを過ごした。 駅前のコンビニに寄り、ミネラルウォーターと缶ビールを二本買う。ビールは俺ではなく善に飲ませるためだ。俺が酔っているのだから、あいつも少しは酔わせたほうが楽しめるだろう。 しかし、俺は予想外にお預けを食らうこととなった。 見上げたマンションの自室の窓が暗かったが、きっと寝てでもいるんだろうとほろ酔いの頭で嫌な予感を吹き飛ばしたのに。 玄関を開けた先には明かりも人の気配もなく、さらに言えば、いつも出しっぱなしの善の靴が消えていた。 寝室まで無人なのを確認して、マジか、と立ち尽くす。 こんなに死ぬほどヤりたくて仕方ない日に限って、善がいないなんて。 俺は自由外泊を許可した数ヶ月前の自分を心の底から呪った。ベッドは俺が朝抜け出した形のままで、乱され汚されるのを静かに待っているように見えるのに。 とはいえ、まだ外泊と決まったわけではない。現在時刻は十時ちょっと過ぎ。経験上、日付が変わる頃にのっそり帰ってくる可能性も大いにある。 それなら帰り次第で抱かせるまでだ。そのためには恙無く準備を済ませておかなければなるまい。酒でやや鈍くなっている頭は早々に答えを出した。 俺は風呂場へ向かう。着替えを用意し忘れていることに気づきもしないまま、煙草臭くなった衣類を脱衣籠に放り込む。 準備はそれなりに面倒ではあるが、セックスのためと思えば何の苦があろうか。かかる手間も時間も、セックスによって得られる充足感とは比べることすら愚かしい。 善が帰ってこなかった場合、この準備はまったくの無駄となるわけだが、その可能性からは目を背けたまま俺は洗浄を済ませ、労働の疲れをシャワーで綺麗に洗い流した。 髪を雑に拭き、腰にタオルを巻いただけの格好でリビングに戻る。 手持ち無沙汰に善へ買ってきたビールを一本開けた。「フランダー」で飲むビールは特別美味いということもなく至って普通だが、微妙にぬるくなった缶ビールよりは遙かにマシだと思った。 適当な部屋着を着てソファに座り、テレビのリモコンに手を伸ばす。別段観たくもないバラエティを垂れ流しながら、俺はしばらくぼんやりしていた。目は画面を見ているが、頭に内容は入っていない。 ちびちび飲むビールが缶の三分の一くらいまで減った頃、急に怒りに近い感情が湧いてくる。 そもそも俺はヤりたいときにヤるためにあいつを飼っているのに。寝床を提供し飯を食わせてやっているのに。なぜ今こんな仕打ちを受けているのか。恩を仇で返すような真似しやがって。 多少不条理な思考回路になっていることはどこかで理解していたが、ムカつくやらムラつくやらでイライラしてきてしまって、衝動のままに立ち上がる。 軽くなった缶をキッチンのシンクに乱暴に起き、テレビも電気も点けっぱなしで、俺は寝室へ向かった。 クローゼットを開け、隅に押しやられていた箱を引っ張り出す。 五十センチ四方ほどのそれには、所謂大人の玩具が詰め込まれていた。 善と出会う以前に買い集めたものだ。セックスできない日にこれらを使って欲を発散していたのが懐かしく思える。 据わった目で箱の中身をじっと見下ろし、ひとつだけ取り出して箱の蓋を閉めた。 まあまあ太めの黒いバイブ。つるっとしてシンプルな見た目の割に、ピストン機能がかなり強力でエグい代物。 頻繁にお世話になっていたが、試しにスイッチを入れてみるとちゃんと動いた。丈夫で素晴らしい名器である。 善の代わりに、こいつにヤってもらうことにする。 着たばかりの部屋着を脱ぎ散らかして、バイブ片手にベッドに乗った。枕元に常備してあるゴムを黒いシリコンに被せ、ローションのボトルを開ける。

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