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#3-5
ことセックスに関して、善は「何でもあり」だった。
男も女もタチもネコも年齢も倫理感も。相手が求めるものを的確に理解し提供する。プロの仕事だ。セックスのプロ。
で、俺が求めるのは、とにかく溺れさせてくれること。
会社とか社会とかあらゆるものから解き放たれて狂う時間。何もかも忘れさせてくれる圧倒的な快感、欲しいのはただそれだけ。
それだけだが、今まで誰ともそんなセックスはできなかった。
男のオーガズムは普通十秒程度しか保たない。ドライだってそう変わらない。
どんなに激しく抱こうが抱かれようが、せいぜい数分もすれば、人は正気に戻ってしまう。
そのはずなのに、善と寝るとまるまる一晩ブッ飛んでいられた。そんなのは初めてだった。
中毒性と依存性のある、脳を直接いじくられるかのような、強烈な快楽。
一度味わったら忘れられなくなって、俺は最初の夜に善の言った通りになった。
善を知るより前の自分に戻れなくなった。
そのことを、別に不幸だとは思わない。
この上なく満たされた心地になれる夜があって、それを拠り所に日々の理不尽にも耐えることができた。
そういう存在が誰にだって必要なはずだ。打ち込める趣味だったり、愛する誰かだったり。
それが俺にとってはセックスそのものだというだけ。
溺れているあいだ俺は世界から何も求められない、その自由がこの上なく幸せだ、でも。
やがて来る朝の恐ろしさも倍増した。
それから逃げるためにもっと求める。
俺は善というクスリに依存している。
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