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#6-6
タチネコが入れ替わったからって、善とのあいだに今更、緊張もなにもないのだけれど。
シャワーを終えた善の、やたらウキウキした様子に、一抹の不安を感じないではなかった。
「……なんでそんなに楽しそうなんだよ」
「えー? 楽しいに決まってるじゃん。千亜貴の人生の一大イベントじゃん」
タオルで髪をぐしゃぐしゃと雑に拭く善の姿は、海外のアイドルのポートレートか何かのように見えた。絵になりすぎていっそムカつく。
残念ながら俺自身は、俺の童貞にさほど愛着がないもので。善ほど盛り上がってはいない。が、童貞卒業に浮き足立つというのは、考えてみれば結構“普通”っぽいな。俺ももっとそわそわしてみせたらいいんだろうか。
とか思っているうちに、半裸のまま善にベッドへと押し倒された。整った顔の向こうに見える天井。ツンツンの金糸が蛍光灯に煌めいている。
「……って、おい。逆だろうがよ」
「んーん、これで合ってる」
言いながら善は枕元に手を伸ばした。電気のリモコンに触れたらしく、照明が僅かに落とされるが、暗いというほどではない。善に任せると明るいまますることのほうが多いが、今日も例には漏れないようだ。
「千亜貴、俺に入れたいだけでしょ。抱きたい、ってわけじゃないでしょ?」
「意味がわかんねえ。なにが違うの」
「だから……千亜貴は寝てればいいよ、ってこと」
首筋を甘噛みされ、鎖骨のあたりまで舌が這う。片手は肋骨を数えるようにゆるゆると脇腹を辿っていた。気持ちよさより擽ったさが勝って、俺は身を捩るが解放はされない。
指先が時折、強めに肌を押しあげて、そこにじわりと痺れるような愉悦の種が生まれる。
「ん、……っ」
胸に吸いつかれると、途端に脳髄を駆け上がるような快感があった。かさついた唇で挟まれてから、舌先で転がされる。
「ッ、そんなん、しなくてい、だろ……っ」
「だめだよお。ちゃぁんとサイコーに気持ちよくなってもらわないと」
口元を手で覆う俺に構わず、善はもう片方の乳首も指で刺激し始めた。強めにつねられ、すぐに優しく指の腹で撫でられる。平らな胸を手のひらで掬うように揉んで、女のそこのように無理やり丘陵をつくられてから、尖った頂に歯を立てられる。
背が勝手に仰け反って、もっと強い刺激をねだるような格好。
「っ、ふ……ッ、ん、っ……」
「声だしていいよ、いつもみたいに。タチだからってガマンしなきゃいけないと思ってる? 関係ないよ」
ねっとり舐めあげて囁かれる。
いつもだって、あんまり派手に鳴かされるのは癪だから、我慢してはいるのだ。すぐ我慢の限界に到達してしまうだけで。
でもなんか今日は、意地みたいなものが俺にもあって、いつもよりキツく唇を噛んでしまう。
だがそれも、散々弄くりまわされた乳首が腫れあがる頃には、意味を成さなくなっていた。荒い呼吸の狭間に見上げる善は、捕食者の目をして笑っていた。
「ぅあ……っ!」
臍の下のあたりにぢゅっ、と吸いつかれて、大きく腰が跳ねる。そのまま下腹部を数ヶ所啄まれたと思ったら、腰骨の隆起を噛まれて。
「あ、……あっ、は……っ」
俺の弱いところを知り尽くしているうえ、今日の善は、やたら的確にそこばかり触れてくる。いつもならもっと焦らされるのに。
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