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#10-6

細身のパンツと下着を脱がせると、芯をもった善のが現れて、なんだかとても不思議な気分になった。 これで散々泣かされてきたというのに、今からするセックスは、これを使わないのだ。 俺は今から手と口でこれを気持ちよくさせようと思うが、それは善に感じてほしいからであって、硬くさせて俺の中に入れてもらうためじゃない。それがすごく、変な感じだった。 「……や、いいよ、そんなの、しなくて」 「うるさい。好きにしていいっつっただろ」 「う……」 根元をゆるゆると扱きながら、先端の丸みを舌で濡らしていく。裏筋を舐めあげて、鈴口のまわりを人差し指の先でくるくるなぞる。カリの段差に舌を突っ込むと、俺の髪を掴んだ善の手に力がこもった。 ぱく、と先端を口の中に咥えこむ。丁寧に舌を絡めながら頭を上下させて、教え込まれた善の感じるところを余さず愛撫していく。じゅる、と下品な音をさせながら、啜って、吸いついて。 タチ役がちゃんとできるかはさておき、これならとりあえず、善をよくさせられる。 「ん、んっ」 押し殺した声を聞きながら、硬くなった幹にしゃぶりついて、開かせた脚のあいだのほうまで指を這わせてみた。後孔とのあいだの滑らかなところを、指の腹で触れるか触れないかくらいに辿ると、善の腰が大きく震える。 「んん……」 唾液を絡ませた指を後孔に当て、角度を探りながらそうっと挿入していく。窄まって閉じたところが、僅かなぬめりだけで俺の指を受け入れる。 「……ふ……っ」 そこで繋がったことはあるのに、指で善の中に触れるのは、これが初めてだった。ずる、と指先が引きずりこまれるような感覚に、なんだか妙な感動があった。 口で前への愛撫を続けながら、飲みこまれた内部を恐る恐る探っていく。あったかくて、吸いついてきて、指を動かすたび感じる抵抗が、愛おしくすら感じる。 「あ、っ、そこ……」 善が声をあげた。わかりやすく膨らんだ前立腺が指先に触れていて、強く押すと性器まで連動してびくっと反応する。 喘ぐ声が露骨に大きくなる。入り口を拡げるように浅くピストンしながら、転がして、ぐにぐに押して、弾く。 少し弛んだところに、入れる指を増やして刺激すると、下肢がびくびく跳ね、胎内が収縮した。  「あ、あ……それ、い……っ」 二本の指でしつこいくらいにそこを擦りあげながら、唇で陰茎を扱く。できるだけ深く咥えこんでは、きつく吸いながら抜きだして、尖らせた舌をねじこむ鈴口から、苦いような体液が滲みだす。 細い腰を浮かせるさまに、俺の心のどこかが満足を訴えるのを感じた。征服欲、だろうか。俺にそんなものあったのか。 「あっ、あっ、ちあき、千亜貴ぃ、ねえっ」 善が、俺の裸の肩にかるく爪を立てる。口淫をやめて見上げると、唇を震わせて「も、いいから、いれて」とねだる言葉を口にした。 「え、もう?」 「もういい、いいからぁ……」 「でも」 善は俺以上に慣れているのだろうし、確かにすんなり二本入った。とはいえ奥がまだ強張ったような感じがする。 これは俺の予想にすぎないけれど、たぶん、ここを使うのは久しぶりなんじゃないだろうか。 もっとちゃんと慣らしてから入れてやりたい。自分はちょっと乱暴なくらいに挿入されるのが好きだけれど、善にそうしたいとは思わない。不思議だ。さっきから初めての感情ばかりで、いちいち戸惑う。 でも、青い瞳をとろけさせた善に、上擦った声で、 「いれてほしい、ちあきに、入れられたい」 そんな言い方で求められると、応えてやりたくなったのもまた事実だった。 だって、あの善が。 余裕ぶっていて飄々として、何にも執着せず、ひとりぼっちで風に吹かれて立っている柳のようだった、この男が。 俺にそんな無体なことをねだっている、と思ったら。 ぐらっ、ときてしまった。 ジーンズを脱ぎ、完全に勃っているものを善のそこにあてがおうとして、はたと気づく。そういえばゴム、持ってない。善は持っているのかもしれないが、 「そのままでいいの」 と聞けば、「いい、そのまま……」と返ってきた。長い脚を抱えあげ、ひくついているところをもう一度だけ指でぐるりとかきまわしてから、先端を押しつける。 「はっ……あ、あ……っ」 善は感じ入ったような声を漏らし、ぎゅっと目を瞑っていた。 一番太いところを飲み込ませるのはさすがにきつくて、何度か腰を引いてじわじわ圧迫していく。狭いシングルベッドが軋んで鳴った。 横たわっている綺麗な身体を見下ろしながら、俺は額に薄く滲んだ汗を拭う。 繋がったところは当然、俺の目にしっかり映っていて、じわじわと押し寄せる快感の小さな波とともに、高揚感のようなものを湧き起こさせた。 俺のが善の中に入っていってる。善にそうされているんじゃなくて、俺が自分の意思で腰を進めて、善に挿入している。善はその下でされるがまま、開いた両脚を震わせながら、浅い息を繰り返している。 「ん、っふ……あ……あっ」 善の中はやはり、前に入ったときよりも相当きつい感じがあって、でもあのときよりも熱いような気がした。ぎゅうぎゅう締まる媚肉のなかにゆっくりゆっくり押し入っていくと、もう離したくないと言われているみたいで、ちょっと興奮する。 うねって蠢く襞の感触も、俺にいちいち痺れるような愉悦を与えてきて、正直すぐにでもイけそうだった。一度経験済みでよかった、と頭の片隅で思う。 時間をかけて俺のを全部入れると、それを察した善が薄く目を開ける。何か言いたげに俺の顔を見上げたが、吐息を漏らすだけで結局なにも言わずに、繋がっている下半身のほうへおぼろげな視線をやった。 「痛い?」 俺が訊ねると、善はふるふると首を横に振る。そして少しだけ笑った。 「痛くしてもいいのに」 「……そんな趣味ねえよ、お前と違って」 「ふふ……そっかあ」 シーツを握りしめていた善の手が緩んで、俺の肩を滑る。引き寄せられるままにキスをした。善の背の下でベッドがまたぎしりと鳴った。

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