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#10-9

「……じゃあ、誕生日」 「……ふふ。そんなこと訊くの?」 「なんだよ。いいだろ別に」 「だってさあ。なんでも教える、って言ってるのに、そんなこと」 「俺が知りたいんだから、いいだろ」 「いいけどさ。くがつはつか」 「……先週じゃねーかよ……」 「千亜貴は?」 「……十月十日」 「近っ」 「なにくれんの」 「なに欲しいの?」 「こないだコップ割っちまった」 「あはは……バカラでいい?」 「やめろ。普通でいい、普通で」 「ふふふ」 「……」 「……」 「……あの、金平糖」 「うん」 「すっげえ甘かった」 「あははっ、食べたの?」 「悪い」 「いいけどさ。勇気あるね。さすが千亜貴」 「……なんでうちに置いてったの。御守り、なんだろ」 「んー、なんでだろうね」 「とぼけんな」 「実はね、千亜貴んち出てきたときのこと、あんま覚えてないんだ」 「え」 「たぶん、千亜貴に持っててほしかったんだよね」 「だから……なんでだよ」 「だって千亜貴、やめろ、って言ったじゃん」 「あれは……マジのクスリだと思ったから」 「うん。でもさ、俺にとってはマジのクスリだから」 「……」 「千亜貴が持っててくれるって思えば、やめられると思った」 「……」 「……でも、もう要らないよ」 「……ほんとに?」 「だって千亜貴が薬になってくれるんでしょ」 「……うん」 「それにほら、もう千亜貴としかセックスしないし」 「ほんとかよ……」 「え、ほんとだよ? 死ぬまで千亜貴としかしない」 「死ぬまでとかやめろ、重い」 「あはは、そう?」 「うん」 「いやになった?」 「ちょっとな」 「ふふ。酷いなあ……」 「……」 「……」 「……お前に、訊きたいこと、いっぱいある」 「うん」 「知りたいこと、やまほどある。けど」 「うん」 「……ねむい」 「ふふ……そうだね」 「お前も眠い?」 「ん-、ちょっとだけ」 「……じゃあまだ起きてる」 「なんで。寝ていいよ」 「いやだ。お前が寝るまで起きてる」 「なんで?」 「またいなくなられたら困る」 「ごめんって」 「ゆるさない」 「そんなにさびしかった?」 「……」 「ねえ、千亜貴も会いたかった?」 「……」 「ねえってば」 「……やっぱ寝る」 「えー」 「お前も寝ろ」 「えー、んー、わかったあ」 「……おやすみ」 「うん。おやすみ、千亜貴」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……カレー」 「……」 「千亜貴のカレー、食べたいなあ……」 「……飽きたんじゃなかったのかよ」 「飽きたんだけどねえ」 「別に、カレー以外も作ってやるし」 「ふふ。ほんと」 「だから、お前も」 「うん?」 「好きなもんとか、……嫌いなもんとか」 「うん」 「……おしえて。……これから」 「……うん」 「……」 「……うん……」

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