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第一章・9

 そう。  丞には、見当がついていた。  秀斗がなぜ、急に准にあんなことを言ったのか。  いや、急にではなく、徐々に浸透していったのかもしれない。  あの男の心に。 (秀斗の奴、准のファッションは自分に釣り合わない、と思ってやがるな)  デートだから、とキメてくる自分に反して、普段着の恋人。  そんな准に、不満を覚えたのだ。奴は。 (俺の可愛い弟を、試すようなことしやがって!)  その思い上がりを、粉々に打ち砕いてみせる。  

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