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第二章・2
「服を選んでたら、遅くなっちゃって」
そう言って、罪のない笑顔を見せる准。
以前の秀斗なら、俺のためにオシャレしてくれたのか、とのぼせ上がるところだ。
「結局、兄さんに手伝ってもらっちゃった」
そう。
准の華麗な脱皮の陰には、この『兄さん』の影がちらついているのだ。
「准のお兄さんって、おしゃれなの?」
「うん。この服も、兄さんが選んで買ってくれたんだ!」
秀斗の胸は、ざわめいていた。
准の兄・丞。
彼も、αと聞いている。
(いくら兄弟とはいえ、干渉しすぎじゃないのか?)
αとΩの兄弟の間には、血のつながり以上の愛が芽生えることがある。
それを、秀斗は勘繰っていた。
そして、恐れていた。
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