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第二章・3
恐れている男が、もう一人。
「……」
春の日差しの下、丞はベランダで煙草をふかしていた。
普段は喫煙しない丈があえて煙草を吸う時は、たいてい不機嫌な時と決まっている。
「あの(バカ)秀斗と、まだ付き合ってるのか……」
さっきは、本当に参った。
今すぐ、僕の部屋に来て♡
そんな甘えた声で呼ばれてドアを開けたら、クローゼットを引っ掻き回している准がそこにいた。
「どうしたんだ、これは。自分で自分の部屋に泥棒に入ったのか!?」
「違うよ。兄さんお願い、服を選ぶの手伝って」
「どこか出かけるのか」
「うん。秀斗とデート♪」
少なからず、ショックだった。
准の身も心も全て奴から引きはがし、俺のものにしたと思っていたのに!
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