39 / 172

第三章 海とプールと秀斗と丞と

 夕暮れのオフィスは、騒々しかった。  今日こそは定時で帰ろうと、残りの仕事を急ぐ者。  すでに残業が決定し、のんびり業務に臨む者。  そして、わずかな雑談があった。 「梅宮くん、今度の日曜ゴルフでもどうだね?」  丞は、直属の部長にそう持ち掛けられていた。  さとい人間は、聞き耳を立てている。  部長のお気に入りになれば、昇進するチャンスがぐっと増す。  まだ若いが、優秀なα・梅宮 丞。  彼もまた、そんなゴルフ接待を繰り返し、出世していくのだろうか? 「申し訳ありません。その日は、約束がありまして」  周囲は、耳を疑った。  まさか、部長の誘いを、昇進のチャンスを自ら振るとは!

ともだちにシェアしよう!