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第三章 海とプールと秀斗と丞と
夕暮れのオフィスは、騒々しかった。
今日こそは定時で帰ろうと、残りの仕事を急ぐ者。
すでに残業が決定し、のんびり業務に臨む者。
そして、わずかな雑談があった。
「梅宮くん、今度の日曜ゴルフでもどうだね?」
丞は、直属の部長にそう持ち掛けられていた。
さとい人間は、聞き耳を立てている。
部長のお気に入りになれば、昇進するチャンスがぐっと増す。
まだ若いが、優秀なα・梅宮 丞。
彼もまた、そんなゴルフ接待を繰り返し、出世していくのだろうか?
「申し訳ありません。その日は、約束がありまして」
周囲は、耳を疑った。
まさか、部長の誘いを、昇進のチャンスを自ら振るとは!
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