41 / 172
第三章・3
分が悪い、と丞は感じていた。
今日は運よく定時で退社できたが、これまでを振り返ると、いや、今後も考えると、圧倒的に秀斗に対して分が悪い。
丞は、ほぼ常に残業で帰宅が遅い。
帰って来ると、准はすでに眠っているのだ。
かたや秀斗は、学校に居る間は准と一緒。
丞よりも、准と長く密な時間を過ごしている。
「俺は朝食の時に一緒にいる、くらいだもんなぁ」
しかし、ぼやいてばかりもいられない。
お持ち帰りの仕事を片付け、丞は准の部屋を訪れた。
「准、明日の準備はいいか?」
「あ、兄さん」
にこにこと、嬉しそうな准。
手には、バッグを掲げている。
「明日、付き合ってくれてありがとう」
そう、丞は明日、准と共にプールへ行く約束をしていたのだ。
ともだちにシェアしよう!