42 / 172
第三章・4
プール開きの時までに、水に慣れておきたい、と准は言う。
「小学校の時にも、兄さんに泳ぎを教えてもらったよね」
「ああ。准は3年生まで全く泳げなかったもんな」
水の中でもがく准を、手取り足取り訓練した過去が思い出された。
あの時と変わらず、准は可愛い弟だ。
ああ、もう、可愛すぎて……。
キスをしようと、丞は准に近づいた。
「もっと巧く泳げるようになったら、秀斗と一緒に海に行くんだよ」
「何ッ!?」
聞けば、秀斗が夏には海へ行こうと誘ってきたらしい。
「海はよしなさい、准。日に焼けるし、クラゲは刺すし、潮で体がべたべたになるぞ」
「兄さん、海が嫌いなの?」
嫌いではない。
嫌いではないが。
「秀斗と二人だけで、未成年だけで海へ行くのは危険だ」
「じゃあ、兄さんが保護者としてついて来てくれる?」
ともだちにシェアしよう!