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第三章・4

 プール開きの時までに、水に慣れておきたい、と准は言う。 「小学校の時にも、兄さんに泳ぎを教えてもらったよね」 「ああ。准は3年生まで全く泳げなかったもんな」  水の中でもがく准を、手取り足取り訓練した過去が思い出された。  あの時と変わらず、准は可愛い弟だ。  ああ、もう、可愛すぎて……。  キスをしようと、丞は准に近づいた。 「もっと巧く泳げるようになったら、秀斗と一緒に海に行くんだよ」 「何ッ!?」  聞けば、秀斗が夏には海へ行こうと誘ってきたらしい。 「海はよしなさい、准。日に焼けるし、クラゲは刺すし、潮で体がべたべたになるぞ」 「兄さん、海が嫌いなの?」  嫌いではない。  嫌いではないが。 「秀斗と二人だけで、未成年だけで海へ行くのは危険だ」 「じゃあ、兄さんが保護者としてついて来てくれる?」

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