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第三章・14
そうなると気になって来るのが、秀斗のことだ。
丞はまだ、准と二回しか交わっていない。
(秀斗とは、どれくらい寝たことがあるんだろう)
帰りの車の中、運転しながら丞は悶々としていた。
訊ねるにも、准は助手席ですうすう眠ってしまっている。
しかし、その寝顔を見ていると回数など、秀斗など、どうでもよくなってくる。
「俺は、俺。だからな」
シャワー室での、思いがけないセックス。
その最中には、秀斗のことなど意識からどこかへすっかり飛んでしまっていた。
頭は、准でいっぱいだった。
「さて、これからどうするか」
まずは、病院で発情抑制剤の相談だ。
それから……。
「准に似合う、スイムウェアを買わなきゃな」
隣で眠る弟に、そう独り言で話しかけた。
初夏に近い、ある日の出来事だった。
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