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第四章・9
はぁはぁと息の荒い准は、甘い余韻に浸りきっている。
そっと彼から自身を引き抜き、秀斗はティッシュで後始末を始めた。
目を合わせても、准は罪のない笑顔を見せるだけだ。
秀斗は、勇気を振り絞って言ってみた。
「あの、さ。さっきの言葉、何?」
「さっきの言葉、って?」
「イく時に言った……『兄さんのバカ』って……」
俺に抱かれながら、お兄さんのこと考えてたの?
責めるつもりはないが、少々口調がきつくなる。
だが准は、全く動じなかった。
「ううん。秀斗のこと好き、って考えてたよ」
でもね、とおまけを付け足したが。
「ね、秀斗。僕に協力してくれる?」
「協力?」
「頭がいい秀斗に抱かれたら、いい考え浮かんじゃった!」
准の『いい考え』には、時折とんでもないものがある。
秀斗は嫌な予感を覚えながら、准の体を拭いてあげていた。
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