62 / 172
第四章・10
日曜日、丞は父のよこした写真を手に、レストランへ来ていた。
以前、准と共に昼食を摂った、フレンチの店だ。
打ち合わせによると、彼はここに現れるはずだが……。
店内に入ると、すぐに席を立ちあがり片手を上げる青年の姿が目に入った。
「あ」
くだんの、見合い相手だ。
丞は、ゆったりと彼の席へ歩んでいった。
「初めまして。海野 茜(うんの あかね)です」
「梅宮 丞です」
丞が名刺を出そうとすると、茜はやんわりとそれを止めた。
「ビジネスでは、ないので」
「それもそうですね」
父の取引先の息子同士がお見合い、といえば立派なビジネスの匂いはするが。
ともだちにシェアしよう!