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第四章・12
「僕も、兄弟がいるんですよ。兄が一人、います」
「うちと一緒ですね」
実は、とここで茜は声を潜めた。
淡々とはしているが、思いきった告白だった。
「実は僕、兄と愛し合っています」
「え?」
そんなところまで、うちと一緒か!?
丞は取り乱したが、それは表面には出さずに黙って耳を傾けた。
茜は、よほど丞を信頼してくれたのか、赤裸々に内情を語った。
学生の頃から、体を重ねるようになったこと。
兄の子を宿し、中絶させられたこと。
それを機に、兄は他のお嬢さんと結婚させられたこと。
それでも二人は互いを忘れられず、密かな逢瀬を繰り返したこと。
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