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第四章・14
しばしの沈黙ののち、すみません、と茜の小さな声がかかった。
「身勝手な話ばかりで。でも、もし梅宮さんが少しでも僕のことを気にかけてくださったなら……」
そこで、言葉は途切れた。
落ち着いたレストランの店内を、ひどくかき乱す空気が流れ込んできたのだ。
「丞! 僕という恋人がありながら、お見合いだなんてひどい!」
「お、俺も付き合ってるのに。二股の上にお見合いなんて許せない!」
丞は、ぽかぁんと口を開けた。
「准! 秀斗!」
何と、准と秀斗が、丞のニセ恋人を装って、茜の前へ飛び出してきたのだ!
「海野さん、こんな浮気者、やめといた方がいいですよ!」
「不義理にもほどがあります!」
やれやれ、と丞はコーヒーカップをソーサーの上へ静かに置いた」
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