68 / 172
第四章・16
丞は、その場で気持ちの整理を付けていた。
俺がもし、このまま准を愛し続けたら、きっと傷つけることになる。
この可愛い弟の、身体も心も傷つけることになってしまう。
幸い准には、少々頼りないが(バカ)秀斗がついている。
医者の息子で、自分自身も将来は父の後を継ぐ気でいる、優秀なαがついている。
丞は、一度ゆっくり瞬きをし、准を見た。
「海野さんとは、結婚を前提としたお付き合いをすることにした。だから、下手な芝居はもう、よしなさい」
「兄さん……」
青ざめた、准の顔。
それを見るのは、何よりつらかった。
「兄さんの、バカッ!」
入った時より勢いよくレストランを出ていく准を追ったのは、丞ではなく茜だった。
そして丞は、准を追おうとする秀斗の腕を掴んで、止めた。
「お、お兄さん?」
「秀斗、座ってくれ」
α同士の話し合いが、始まった。
ともだちにシェアしよう!