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第四章・16

 丞は、その場で気持ちの整理を付けていた。  俺がもし、このまま准を愛し続けたら、きっと傷つけることになる。  この可愛い弟の、身体も心も傷つけることになってしまう。  幸い准には、少々頼りないが(バカ)秀斗がついている。  医者の息子で、自分自身も将来は父の後を継ぐ気でいる、優秀なαがついている。  丞は、一度ゆっくり瞬きをし、准を見た。 「海野さんとは、結婚を前提としたお付き合いをすることにした。だから、下手な芝居はもう、よしなさい」 「兄さん……」  青ざめた、准の顔。  それを見るのは、何よりつらかった。 「兄さんの、バカッ!」  入った時より勢いよくレストランを出ていく准を追ったのは、丞ではなく茜だった。  そして丞は、准を追おうとする秀斗の腕を掴んで、止めた。 「お、お兄さん?」 「秀斗、座ってくれ」  α同士の話し合いが、始まった。

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