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第五章 幸せと不幸せと
丞が追加で頼んだコーヒーに、秀斗はミルクを少しだけ入れた。
砂糖も入れたいところだったが、背伸びをして大人のふりをした。
「同じ、准を愛した男同士として、腹を割って話そう」
「はい」
「准とは、寝たのか」
「……はい」
「避妊は?」
「時々、忘れます」
秀斗の返事に、丞はぎろりと目を剥いた。
「今後は、絶対に忘れるな」
「すみません……」
コーヒーカップを傾ける丞を、秀斗はしげしげと見つめていた。
正直、負けた、と思った。
秀斗が想像する『カッコいい大人の男』が、そのまま目の前の丞なのだ。
だが、准を想う心は負けない、と気を入れなおした。
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