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第五章・2
「お兄さんは、どうなんですか」
「何が」
「准と、その……」
「ああ、抱いた」
さらりと言ってしまうところが、また憎いほどカッコいい。
だがしかし。
「避妊、しましたか?」
「してない」
なんですって、と秀斗は声を上げた。
「近親交配では、先天異常を持って生まれる子が誕生する確率が高くなります。それを知らなかった、とは言わせませんよ!?」
「すまない。あいつが、安全日だ、といったもんでな」
今度から気を付ける、と言いかけて、丞は苦笑いした。
たった今、准から身を引く決意をしたばかりだというのに。
決意が揺らがぬように。
今後、准には兄としてだけ振舞うように。
丞は秀斗に、願いをかけた。
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