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第五章・5
僕と同じだ。
僕と同じに、兄さんを愛して。
それなのに、不幸になっちゃった人なんだ。
「准くん。お兄さんは、君の幸せを望んで、僕とお付き合いする気になったんだと思うよ」
「僕の、幸せ」
「そう。准くんには、僕みたいになって欲しくない、って思ったんだよ。きっと」
「……」
黙ってうつむいてしまった准に、茜はホッとしていた。
解ってもらえたのだ、と思っていた。
「海野さんは、幸せじゃないんですか?」
「え?」
顔を上げた准は、瞳に涙をいっぱい溜めていた。
「お兄さんを愛したこと、後悔してるんですか? 止めておけばよかった、って思ってるんですか?」
「そ、それは」
思ってもみない、准の反撃だった。
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